フィッシュカービング アマゴのつくり方 fish carving the progress of the work
PH-7 フィッシュカービングのアマゴ制作過程を紹介させていただきます。
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アマゴをつくる。
●アマゴ

カーヴィングとは
 CARVING(カーヴィング)とは、「彫る・彫刻する」と言う意味だそうです。バード・カーヴィングから一般的になった言葉で、生命体を別の素材を用いて表現する事のようです。
 フィッシュ・カーヴィングも、近年 様々な手法で表現されています。お土産の熊の一刀彫の技術を用いたり、バードカーヴィングの手法を取り入れたモノから、生体( ホンモノ )から型取りをしFRPなどで制作する、飲食店にある食品サンプルのようなモノまで様々な表現方法でフィッシュ・カーヴィングも制作されています。
 如何なる方法・手法で制作されたモノでも、異なる素材で「さかな」を制作すれば「フィッシュ・カーヴィング」と呼ばれます。

アマゴ
アマゴはこんなさかな

アマゴとは、サケ科に属する渓流魚のこと。中部関東以北の河川に生息するヤマメとよく似た魚です。成魚は平均25〜30cm それ以上に大きくなるのもいます。体側の側線回りに朱点を散りばめた、ヤマメより少し派手な魚です。
 河川に残留するモノをアマゴと呼ぶ、降海・海洋生活を送り産卵の為に河川へ遡上した魚を 「サツキマス」 と呼びます。丁度サツキの花が咲く( 4月下旬から5月中旬 )頃に遡上するのでこの名前が付いたようです。

  ヤマメとサクラマスの関係と良く似ています。本来アマゴは、神奈川県西部の河川から太平洋を 西に、九州の一部地域と四国全域が生息域でした。近年の渓流釣りブームで見境無しに放流されました。日本海に注ぐ河川や関東以北のヤマメ域にまで生息が確認されています。生態系にもよくないようです。

サツキマス
材料と道具類
私の使用する道具類は、別段変わったものもありません。日常的に使用する道具で制作いたします。ここで紹介出来ない物は各コーナーで順次紹介します。
左端から斜め上に、木工ボンド・瞬間接着剤(木工用)・2液性エポキシ樹脂・プラカラー・クリアーラッカー・ラッカーシンナー・シルバーマイカー・下手前からアルミホイル0.2o・真鍮線・トレーシングぺーパー・サンド・ペーパー(♯120〜400)・バルサ材。
左端からカッターナイフ(厚刃)・カッターナイフ各種・鉄筆・エンピツ・ルーラー・筆各種・竹ベラ[彫刻用]・綿布・粘土・三角定規。
Fish Carving [魚の模型]制作プロセス アマゴをつくる。
1. スケッチをします
始めに、写真からのスケッチだと全体像が浮かばないと思います。出来るなら実物をスケッチして頂きたい。図鑑や写真の魚は左頭の側面しか写っていないようです。やはり生きた魚の観察をお勧めします。
 中国地方の一部で、アマゴをヒラベやヒラメと呼ぶところがありますが、これもこの魚の体形を知り尽くし表現された言葉だと思います。その呼名の通り確かに平たい魚なのです。
2. スケッチをトレースして、着色しましょう。
スケッチから要らない線を取り除き、輪郭線を残すようにして下さい。もう一枚はカーヴィングの際に着色の参考として使用しますので、簡単で明解な色で着色して下さい。
3. 立面図を作る。
スケッチを基にして原寸で作りましょう。側面・背面・腹面・各ヒレの部分を書き込んでいきます。細い線で2〜3o程余裕を持ってアウトラインを書いておきましょう。
4. パーマークのマスキングペーパーを作る。
トレーシングペーパーを図面の上に置き側面をトレース、カッターナイフで小判型を切り抜いておきます。これは、着色の際使用します。(多く制作する際は、薄いフィルムを使う)
5. バルサ材に輪郭を写し取る。
まずは、側面をバルサ材に写してから、これを切り抜いて下さい。このとき一緒に各ヒレの部分も切り抜いておきます。

・電動のミシンノコを使いますが、イトノコでもかまいません。出来る限りゆっくりと切り抜いて下さい。厚みがありますので、急いで切り抜くと上部と下部の厚みが違ったりします。同時に、各ヒレの部分を切り抜いておきましょう。
6. 中心線を書く。
側面を切り抜いたボディの背面と腹部に中心線に沿って線を入れます。この周りに肉を付け、そのアウトラインに沿って厚手の刃のカッターナイフで削っていきましょう。
7. 頭部(顔)をトレースから彫り込み。
顔の部分を写し取ります、サイドを見ながらずれ無いように細いカッターナイフでライン部分を2〜3o程切り込みを入れます。ボディからエラに向かい切り出し凹凸をつけます。
8. サンドペーパーで全体に丸みを付る。
粗削りしたボディを♯120〜♯180ペーパーで全体に丸みを付けていきます。図面を参考にして下さい。
9. 背ビレ・アブラビレ・腹ビレ・尾ビレの先を削る。
余り削りすぎないように注意して行ってください。実物は大変薄いものです。忠実に再現したとしても破損の原因になるだけです。
10. ヒレを挿し込む。
中心線が消えていたら、書き足し、背ビレ・アブラビレ・尻ビレ・尾ビレを取り付けましょう。取り付け位置に印をし、 ヒレの厚み分をカッターナイフで2〜3o程切込みを入れ彫って下さい。切り込みが出来たらヒレを挿して調整して下さい。良ければ接着しましょう。
11. ハンガーで吊るして乾燥。
ハンガーの作り方:クリップを一片が長いVの字のなるようにのばす。長い方を魚の口に差込み吊るしておきます。不安であれば瞬間接着剤で止めておきます。
12. 本体とヒレの隙間を修正。
隙間を、柔らかくした粘土で埋めていきます。このとき押さえねじ込むように隙間に入れて下さい。本体より厚くなるのはかまいませんが、凹んでいるのは良くないです。
13. 眼を粘土で作る。
粘土を丸め、所定の位置に水でつけます。手に水を付け撫でるように半円にしていきます。ここで粘土は終了して、乾燥の為1日ほどおきます。
※眼はガラス製のものでもかまいませんが、こだわりたいものです。全てを自分の手で作りたいと思います。
14. サンディング。
はみ出した粘土を♯180のペーパーでサンディングして下さい。ボディの一体化をはかりましょう。特に目の部分は丁寧に作業して下さい。
15. ヒレに溝を作る。
♯120のペーパーを小さく切り四つ折りにして、ヒレの溝を作ります。深く削らないよう気を付けて下さい。根気が要る作業です。
16. 下地を作る。
ホイルを張る下地作りです、クリアーラッカーをシンナーで薄めに溶きボディに塗ります。一度塗ったら最低8時間の乾燥させましょう。乾燥後、再度クリアーを塗り、 また乾燥。 この工程を4〜5回繰り返します。
※シャブシャブのクリアーラッカーを塗るのは、柔らかいバルサ材に浸透させ強度を出すためです。中頃で1回は♯220位のペーパーでサンディングしましょう。
17. クリアーラッカーを塗る。
アルミホイルを張る為の下準備です。薄めないでクリアーを3〜4回筆で塗って下さい。ここでも1回塗る度、8時間程乾燥させて下さい。
18. ウロコをアルミホイルで作る。
ボディより大きめなアルミホイルを2枚切り取り、裏と裏を合わせボディより5o ほど大きめに輪郭線をエンピツで書き込む、表を上にして1枚ずつ切り抜きようの線を描き込みます。
19. ウロコを作る。
模りしたアルミホイルの表を上に、三角定規で斜めに2〜3oの線を引きます。鉄筆は斜めに構えて作業をして下さい。よく破けますから力は入れずに丁寧に作業していきましょう。引き終えたら線をクロスするように変えて、先ほどと同じ間隔で線を引く、反対側も同じように。両面のウロコが引ければ、輪郭線に沿って切り離して下さい。
20. ウロコ(アルミホイル)を貼る。
片面にリターダーを筆で塗り、しばらくするとと粘着力が出てきます。この時ホイルを貼ます。側線状から背中と腹部に向かい乾いた布で軽くのばしながら張っていきます。 シワは背中と腹部にあえて集中させて、貼り付け後にボールペンなどの丸いプラスチックの棒の背で軽くこすると凹凸がなくなります。同じ要領で片面も貼ります。
21. 頭部のホイル貼り。
ボディが貼リ終えたら、頭部を貼ります。ボディと同様にリターダーを塗ります。粘着力がでたら片面ずつ貼ります。エラの周りから進めて目、口周へと、頭部と口の下にシワが出来ますが、気にせず布を指に巻き空気を出すように細部まで押さえていきます。余分を切り取りましょう。ボールペンなどの背で押さえるとシワの凹凸は無くなります。これでホイル貼りを終わり、吊るして丸1日位は乾燥させましょう。
22. 側線を入れる。
ルレット(裁縫用)で側線を入れます。入れる位置は写真などで観察して下さい。
23. 塗装の為の下地を作ります。
シルバーマイカーをシンナーで薄めクリアーラッカーを加えてボディに薄く吹き付けましょう。アルミのテカテカした光沢を取り魚のウロコの色を出す為です。最後に色止めの為に、クリアーラッカーを吹き付け、約1時間くらい乾燥させます。もう1回同じ工程を行って下さい。
24. クリアーを塗る。
クリアーを全体に塗ります。最初は2度同じ箇所を塗らないように気を付けましょう。1度塗ると、8時間以上の乾燥が必要です。(気温25度位の時で、低いとこれ以上乾燥時間がかります)。この工程を3回繰り返し行って下さい。
25. サンディング。
サンドペーパーの♯180〜220で本体とホイルの段差をなくすための、サンディングして下さい。四角形の木の板にペーパーを合せサンディングするとスムーズに出来ます。
26. クリアーを塗る
クリアーを筆で塗ります。乾燥。これを2回繰り返し、乾いたところでサンディングをします。あと2回程同じ作業を繰り返します。ホイルと下地との段差が無くなれば、下地作りは終了です。
27. 着色をする。(スケッチの着色した図を参考にして下さい)
ホワイトを腹部とお尻ビレに吹き付けます、ホイルと地の境目が消えて見えなくなるまで吹き付けます。仕上げに薄いシルバーマイカーを腹部の側面だけに吹き付けて下さい。
28. 暖色から吹き付ける。(写真では、分かり辛いのでスケッチを参考に)
側線上・下部に、薄くしたクリアーイエローを吹き付けます。次にクリアーイエロー・サファリオレンジ・赤を混ぜ合わせて側線上、エラの付け根から真ん中付近まで吹き付けます。
29. クリアーブルーを薄く吹く。
側線の上部から尾にかけてクリアーブルーを薄く吹き付けます。(魚の背に空のブルーが写り込んでいる状態を表現します( あくまでらしく見せる方法です)
30. パーマークを吹き付ける。
Gで作ったパーマークのマスキングを使います。ボディにマスキングを当て、クリアーブルーに蛍光ピンクを少量混ぜて青紫色を作ります。これにクリアーを足して吹き付けます。乾燥の為に30秒位待ちます。素早く片面も吹いて下さい。
31. 背面の着色。
背中の部分は保護色ですので、生息環境でずいぶんと色の違いが有りますので、思いの色で着色して下さい。背ビレ・アブラビレ・尾ビレなども着色して下さい。
※河川を形成している、岩や砂の色を参考にして下さい。
32. ウロコパターンを吹き付ける。
背面の着色が終れば、パーマークを中心にウロコのパターンを吹き付けましょう。
※手芸用の素材で、ブーケ等に使われるメッシュのネットを使います。ボディに被せて使用しますので、ボディより大きめの長方形にカットします。このネットをあてシルバーマイカーをパーマークを中心に吹き付けていきます。
33. 朱点を描き入れる。
アマゴの大きな特徴の朱点を、蛍光ピンクとサファリオレンジを混ぜた色で側線の上下に散らすように、細い筆で丸く描いて下さい。
※朱点もサイズや数、色が生息地で随分違いがあります。
34. 背上黒点を描き込む。
背部分にある黒点を入れていきます。この黒点も数や形が様々です。少ない個体からニジマスのように多い個体もいます、形状も色々です。思うように描いて下さい。
35. 胸ビレ・腹ビレの着色。
ヒレ全体にホワイトを塗り、乾きを待ち4枚のヒレ全体に着色します。
36. 背ビレ・アブラビレ・尾ビレ。尻ビレの細部着色。
図の着色を参考にして下さい。
37. 眼を描く。
写真などを参考にして、ゴールドやブラスのラッカーを塗りましょう。次に黒目を入れますが、魚の目は丸くないので注意しましょう。アマゴの特徴であるアマゴ星と呼ばれるものがあります。黒目周り数ヶ所に黒い点が存在します。
38. クリアーラッカーで色止め。
両目ができあがったら、色止めの為にクリアーラッカーを軽く吹き付けて下さい。全体にクリアーの吹き付けを2回行います。
39. 顔を化粧する。
頬の部分にシルバーマイカーを筆で塗り化粧をします。
40. 胸ビレ・腹ビレを付ける。
ヒレを本体に差し込み接着します、乾いたら接着部分とその周りにホワイトを吹き付け、さらに乾燥後に色止めの為にクリアーを吹き付けます。乾燥を確認後、全体にクリアーを2回位吹きつけて下さい。
41. 仕上げの塗装。
ここから仕上げで、クリアーを吹き付けるか、筆で塗りましょう。塗っては乾燥を4〜5回繰り返し行います。 最後の塗装はクリアーにリターダーを多めに混ぜて吹き付けて下さい。 これで2日程乾燥させて本体の出来上がりです。
42. 台の取り付け。
台にアマゴを取り付けます。ご自分の好みの台で結構です。取り付ける真鍮棒(約4〜5o)を適当に切り、アマゴの尻ビレ前に真鍮と同サイズのドリルで穴を開け、アマゴに差込み2液性のエポキシ系の接着剤で留めます。バランスを考えてドリルで穴を開け接着します。これでアマゴのかーヴィングは完成です。
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